PLL

phase locked loop,日本語では位相同期回路

PLLを使えば、サンプリングが荒い入力に対して補間をかけることが可能
エンコーダの計測する角度に対して、速度の補間に使える. ホールセンサからの入力で角度や角速度を求めるのに使ったりする.

永久磁石同期モータ(PSM)では,回転するロータに固定されるdq軸座標に加え,dq軸座標から偏差を持っている$\gamma\delta$座標系を定義してやる. センサレス制御では,推定したdq軸座標を$\gamma\delta$座標と,この2つを一致させるように制御する事が多い.
PLLを用いた速度,位置推定器では,入力として($\alpha\beta$軸座標から見た)dq軸の角度$\theta$,出力として($\alpha\beta$軸座標から見た)$\gamma\delta$座標の角度$\hat{\theta}$を構成する.
$\theta$は,センサレスならオブザーバから推定した角度を,センサ付きならエンコーダやホールセンサからの実際の角度を入力とする.PLLを用いる制御系において,必要なのはこれらの軸誤差($\Delta\theta = \theta - \hat{\theta}$)である.センサレス制御だと拡張誘起電圧成分($\gamma\delta$座標系での電圧)からatanで$\Delta\theta$を計算できる.

PLL制御器をPI制御器とした位置,速度推定器について一度まとめる.
$$ \hat{\theta} = \frac{\hat{\omega}}{s}\\ \Delta\theta = \theta - \hat{\theta} \\ \hat{\omega} = G(s)\Delta\theta $$

ここで,PLL制御器$G(s)$をPI制御器とし,ゲインを$K_p,K_i$とすると $$ G(s) = K_p + \frac{K_i}{s} $$

ここで,$\theta$と$\hat{\theta}$の関係は $$ \hat{\theta} = \frac{K_{p}s+K_i}{s^2+k_{p}s+K_i}\theta $$ 実際の角度から推定角度の伝達関数は2次系となる.角速度一定,すなわち等速回転($\omega = const$)角度ランプ入力($\theta = \omega\times t$)に対して追従する. 分母多項式から,この系の固有振動数$\omega_n$と減衰係数$\zeta$を求めると $$ s^2+k_{p}s+K_i = s^2+2\zeta\omega_{n}+{\omega_n}^2 \\ \omega_n = \sqrt{K_i} \\ \zeta = \frac{K_p}{2\sqrt{K_i}} $$ となるので,PLL制御器のゲインによって位置,速度推定器の応答を設計することができる.
速度変化時まで追従させたい場合,PLL制御器$G(s)$を更に積分を加え $$ G(s) = K_1 + \frac{K_2}{s}+\frac{K_3}{s^2} $$ とし,分母多項式より $$ s^3+K_{1}s^2+k_{2}s+K_i = s^3+(1+2\zeta)\omega_{n}s^2+(1+2\zeta){\omega_{n}}^2s+{\omega_n}^3 \\ $$ として固有振動数と減衰係数を設計する.
軸誤差からPLLで推定する方法を最初に思いついたのは大阪府立大の森永茂雄先生?

参考文献

推定位置誤差情報を利用したIPMSMの位置・速度センサレス制御
Sensorless Control Strategy for Salient-Pole PMSM Based on Extended EMF in Rotating Reference Frame
拡張誘起電圧に基づく推定軸誤差を利用したIPMSMのセンサレス制御
拡張誘起電圧モデルに基づく突極型永久磁石同期モータのセンサレス制御
永久磁石同期モータのセンサレスベクトル制御 アルゴリズム編
Does PLL measure the REAL motor speed
Rotor Encoder PLL and Velocity